色彩・図形の変化によるロゴの印象とアイデンティティの関係性の可視化
姜研究室 伊藤直樹
企業や製品を印象付けるもの1つとして,ロゴがあると考えられます.ロゴは街の中の看板や,商品パッケージに描かれていたりと,目にする機会も非常に多いと思います.街中に描かれるロゴは,街並みに合わせてロゴの明度や,彩度を調節している事例も少なくはありません.
また,ブランドカラーの印象は,低コストながらも消費者に大きく影響すると報告され,ブランド戦略におけるロゴの重要性が示唆されています.そして企業や製品のブランドらしさというのは,色や形など,企業側が作り上げたものだけで構成されているわけではなく,利用するユーザー像も同時にイメージされます.このように,ブランドらしさはユーザーの振る舞いに影響を及ぼすと同時に,ユーザー自身がそのブランドらしさを形成するといった相互作用があると述べられています.
また,企業ロゴの大きさや比率を分析した先行研究からは,ロゴの要素に白銀比や黄金比が適用されているものもあり,直感的に我々に美しさを感じさせるようなデザインになっていると報告されています.
色彩に関しては,それぞれに対して抱くイメージは個人差があるものの,共通して抱かれるイメージも多く存在し,イメージスケールとしてまとめられています.
このように,ロゴや色彩に関する多くの研究がおこなわれておりますが,ロゴの色彩や形状に着目して,印象評価との関係性を可視化したアプローチは少ないのが現状でした.
本研究では,ロゴに使われる色彩の物理量や,図形の拡大率変化によって感じる,ロゴにおけるブランドらしさの違いを可視化し,よりアイデンティティを感じる配色や図形はどのようなものかといった知見を得ることを目指しています.
第1の実験として,配色パターンを変更したロゴについてと,単色にしたものについての2つのパターンについてブランドらしさを評価してもらいました.結果として,色彩の面積量はブランドらしさを判別する1つの要因となる可能性が示唆されましたが,ほかにも特徴的な形に使用されている色も,その要因となることが分かりました.
そこで第2,第3の実験として,図形の大きさを変えた実験を,オンライン,対面形式でそれぞれ行いました.その結果,図形が同じ大きさのロゴでも周りにどのような刺激があるかによって評価が変わってしまうこと,さらに,色彩や図形のピクセル数といった情報量が,ブランドらしさの判別のしやすさを左右していることが示唆されました.