Mill :動物のぬくもりを非接触で感じられる装置

岡本研究室 永良研斗

富士サファリパークの飼育員,獣医に対して行ったインタビューや書籍から,動物園関係者は我々人間が動物と,動物が生息する環境に対する理解を促進するためには,人間が実際に動物に触れ,「動物のぬくもり」を感じる体験が最も効果的であると考えていることが明らかになった.
動物園を訪れる利用者もまた動物園で提供される「ふれあい体験」に強い関心を寄せており,ふれあい体験は動物園で人気を集めている取り組みの一つである.
しかし,人間が動物に触れることに関してはいくつかの障壁が存在する.まず動物園で展示されている動物と人間との間は多くの場合,柵や檻によって物理的に隔たれている.他にも動物アレルギーや人間に触られることによって動物自身が感じるストレスもその一因となる.このように,安全面や健康面などの障壁が動物と人間の間にある.
本研究の目的は,先述した障壁を乗り越える道具として,直接動物に触らずとも動物のぬくもり,生命感を感じられる装置の開発と,既存のロボットペット,疑似ペットとの比較による実用性の検証とする.
既存のロボットペットは,表現する動物の動作の再現について眼前で実際に生きている動物のデータを参照していない.一方,本研究で制作する装置は眼前で生きている動物から取得したリアルタイムな生体信号を参照し,動物の動作とぬくもりを再現するという点で先行する研究,製品とは異なる.

制作する装置は動物に取り付けるセンサーとなる入力部分,取得した生体信号を再現する出力部分,これらを連携させる通信部分から構成される.生きている動物にセンサーを取り付け,取得した生体信号をもとにリアルタイムで動物の動作を再現する.今回制作する装置では取得再現する生体信号を,心拍と呼吸による肺の動きとした.先行するロボットペットの多くは動物の体温を表現するものが多かったが,生体信号の変化をリアルタイムで使用者に伝えることができるMill においては,体温変化を伝達することが困難であることが予想されたので,これを除いた.心拍と呼吸による肺の動きは動物のバイタルを表す基本的な生体信号であり,使用者が動物の状態を想像しやすく,加えて使用者にその変化を伝えやすいことから,今回取得再現する生体信号とした.
また本研究で制作した装置の名称は,”a Machine that Lives Like an Animal”から”Mill ”(ミラー)とした.

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