フェムテックの関与を高める身体・心理・社会的要因の分析
南部研究室 松田美月
女性の健康の中でも「月経」に注目が集まっています。現在、女性の生涯月経回数は約450回と、400年もの間に5倍近く増加しています。そして、近年「フェムテック」に対する注目が高くなりました。 「フェムテック」とは月経・妊娠・更年期など女性の心身の悩みをテクノロジーで解決する分野になります。これまでに、月経管理アプリ、吸水ショーツ、月経カップなどの製品やサービスが開発されてきました。 また、社会的な取り組みも活発化しており、教育機関での生理用品の無料配布や、企業でもプロジェクトなどが始まっています。 しかしながら、問題点も挙げられます。一つは、フェムテックに対する認知度が低い点です。2021年に20代から60代の働く女性1000人に「フェムテックの言葉と意味を知っているか」という質問に対する回答を示したグラフになります。 聞いたこともなく意味も知らないと回答した人は91.6%でした。2007年の重田らの研究により、BMI19.8未満のやせの傾向が強い女性は、体格が普通である女性より月経痛がいつも痛む危険性があると報告しています。 近年、日本女性のやせ傾向は深刻な問題とされています。女性の「痩せたい」という願望や、過激なダイエットにより、PMS・月経の負担が重くなるなど、心身に悪影響を及ぼしてしまう可能性があると考えます。 このような背景・問題点を踏まえ、私は「女性の身体・心理・社会的行動傾向が、新しい技術・フェムテックへの関与にどのような影響があるのか」というリサーチクエスチョンを設定しました。 本研究では女性の健康のなかでも「月経」に焦点を当て、身体・心理・社会的行動傾向がフェムテックの関与に及ぼす影響について詳しく見ていくことを目的としました。
本研究では、身体・心理・社会的行動傾向がフェムテックの関与にどのような影響があるのかを質問紙を用いて調査した。身体は「PMSの症状」、心理は「痩身願望尺度」、社会的行動傾向は「自己隠蔽尺度」、フェムテックの関与として「製品関与尺度」を用いた。 そして、学生と一般の社会人の2つのデータを採集した。 まずはじめに、身体の症状がフェムテックの関与に与える影響について、PMSの症状が重い傾向がある場合、フェムテックへの「興味」や「使いたい」という点で影響した。 また、PMSの症状が軽くても、フェムテックへの「楽しい(楽しそうだ)」、「安心できる(安心できそうだ)」などの「使う楽しさ」が学生は高く、一般は低いという結果になった。 これは、学生はSNS上の情報や友人間の会話からフェムテック製品・サービスの使用感などの情報を獲得できることから、一般に比べ学生の関与が高くなったと考えられる。 また、痩身願望がフェムテックへの関与に与える影響について、痩身願望を高く持っている場合、フェムテックへの関与も高くなることがわかった。 これは、ダイエットのパフォーマンスを上げたい、という考えからフェムテックへの関与に影響したと考えられる。月経は女性ホルモンの影響で発生し、月経前には体重が増加し、月経後には痩せやすくなる時期に入る。 よって、月経前の体重増加を抑え、月経後のダイエット効果を高めるために、フェムテックへの関与が高くなると考えられる。 また、自己隠蔽傾向がフェムテックへの関与に与える影響について、自身について他者に話すことのできない傾向がある場合、フェムテックに対して「興味」、「使ってみたい」という点で影響した。 これは、他者に言いたくない悩みや不安をSNS上や対人間の話に聞き耳をたてて情報を集めようとする行動が、フェムテックへの関与にも影響したと考えられる。 以上のことから、身体の症状、痩身願望、自己隠蔽傾向はフェムテックへの関与に影響する結果となった。また、学生と一般においてフェムテックへの関与の程度に差が見られた。