時間選好・ナッジが課題の先延ばしに与える影響
石戸谷朱美(川越研究室)
課題の先延ばし
社会比較ナッジ
01
研究背景
大学生の約8割は、課題の先延ばしをしています。課題の先延ばしは、学業に十分な時間を割くことができず、成績を落とす可能性もあります。小学生の夏休み宿題の先延ばしを調査した研究では、先延ばし傾向のある学生は、将来、負債保有者率、肥満者率、喫煙習慣者率、ギャンブル習慣者率、飲酒習慣者率が高くなるといった結果となっています。このように、先延ばしは将来に大きな影響を与えています。本研究では、課題の先延ばし抑制手段として、行動経済学の社会比較ナッジ(他人が取っている行動の紹介をすることで、自発的に良い行動に導く考え方)が有効であるかを検証することが目的となります。
02
研究内容
本研究では、社会比較ナッジが課題の先延ばしに与える影響を調査しました。実験では、ナッジあり・なしの群に分けて課題に取り組んでもらい社会比較ナッジが課題の先延ばし抑制に有効であるのかを検証しました。ナッジありの群には、課題の途中で「すでに60%の人が課題を提出しました(=社会比較ナッジ)」を提示し、ナッジなしの群には、何も提示しませんでした。実験の流れとしては、まず、課題開始前に課題提出目標について設定してもらいました。次に課題を実施しました。最後に先延ばしについて分析を行いました。先延ばしの日数は、提出目標日-提出日としました。分析した結果、先延ばしをした人の割合は、ナッジありの群の方がナッジなしの群よりも18%高いことが分かり社会比較ナッジが先延ばし抑制に有意な効果があることが分かりました。